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Column
喫煙が、身体に悪影響を及ぼすことは広く知られていますが、同様に口腔内の健康にも深刻な悪影響を及ぼします。口は、体の中で最初に喫煙の影響を受ける部分です。タバコの煙には数千もの化学物質が含まれていて、そのうちニコチンや発癌性物質などの有害物質は200とも300とも言われており、口腔内にも深刻な影響を及ぼすことが知られています。
非喫煙者に比べて、喫煙と歯周病の関係や口腔内への影響、禁煙の効果についてご説明します。
タバコの煙に含まれる成分が口腔内に及ぼす影響
歯周組織への影響
歯周病とは、歯と歯茎の間に形成される歯周ポケットに溜まったプラーク内の細菌により引き起こされる炎症のことです。この炎症は主にプラークが原因で発症しますが、タバコに含まれるニコチンが歯茎の血流を悪化させ、歯周組織を弱体化させます。結果として、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病にかかりやすく、重症化しやすいのです。日本臨床歯周病学会によると、歯周病にかかる危険は1日10本以上喫煙すると5.4倍、10年以上喫煙していると4.3倍という報告があります。
ヤニが歯につく影響
タバコの煙に含まれるヤニは、歯に付着します。ヤニはザラザラしているため、プラークや菌が付着しやすく、歯周病になるリスクが高まるのです。そして歯の表面に黄ばみや茶色の着色が生じます。また、ヤニの付着が続くと、歯のエナメル質が侵食され、歯が弱くなるリスクもあります。
口臭の原因となる影響
喫煙によって口臭が発生することもあります。タバコの煙は強い臭いを持ち、口腔内での煙との接触によって口臭が発生します。この口臭は歯磨きやマウスウォッシュによって完全には取り除くことが難しく、周囲の人々にも不快感を与える可能性があります。
タバコの喫煙が口腔内の健康に与える影響
喫煙は口腔内の健康に悪影響を及ぼします。特に、歯周病や虫歯のリスクの増加や口腔・咽頭がんのリスクの増加が懸念されます。
歯周病のリスクの増加・重症化しやすくなる
たばこの煙や成分は、口の中に入ると粘膜や歯ぐきから吸収されます。吸収されたたばこの有害物質は、血管を収縮し、歯茎の血流量を減少させます。血液循環が悪化して歯ぐきに十分な酸素がいきわたらなくなると、歯周ポケットの中で歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすくなります。細菌が産生する毒素は歯周ポケットをさらに深めるとともに歯を支える骨を溶かし、進行すると歯がぐらぐらするようになり、さらに進むと歯が失われます。歯茎からの出血は、炎症という正常な生体防御反応のサインですが、喫煙者では血管収縮による血行不良により炎症が抑えられるため、歯ぐきの出血や腫れが現れにくいことが特徴です。
虫歯のリスクの増加
タバコの煙に含まれている有害物質や発がん性物質は、口腔内に深刻な影響を与えます。タバコを吸うことで口腔内のバランスが崩れ、唾液の分泌が低下し、歯に付着する細菌の増殖を促進します。さらに、タバコのヤニが歯の表面に付着することで、虫歯の原因となる酸の生成を促進させます。そのため、喫煙者は虫歯にかかりやすくなります。
口腔・咽頭がんのリスクの増加
喫煙は口腔内だけでなく、口腔底や歯茎の癌、さらには咽頭の癌のリスクをも増加させます。タバコの煙に含まれる発がん性物質は、口腔内の細胞のDNAに損傷を与え、異常細胞の増殖を引き起こす可能性があります。また、タバコの煙を吸い込むことで口腔内の組織が損傷を受け、癌の発生リスクが高まります。
喫煙者が歯周病を発症した場合、喫煙していることで治療が難しくなるケースがあります。なぜなら、喫煙により感染に対する身体の抵抗力や歯茎の炎症を治す力が弱まり、非喫煙者と同じような治療効果を得られない可能性があるためです。
これは、喫煙者が歯周病になった場合、より深刻な状態に進行しやすく、歯を失う可能性が高まることを意味します。上述のとおり、喫煙をすると歯茎から出血しにくくなり歯周病に気づきにくくなるため、発見が遅れることがあります。
「長年タバコを吸ってきたから、今更禁煙なんてできないだろう」と考えるかもしれません。しかし、ある程度進行した歯周病であっても、禁煙は有効な手段といわれているので「もう遅い」とあきらめる必要はありません。禁煙すると歯茎の状態が回復するため、「歯周病にかかりやすさ」は4割も減り治療効果が高まることがわかっています。治療経過も禁煙者は非喫煙者とほとんど差が無くなります。ちなみに他の病気でも、肺癌にかかる危険は喫煙者では非喫煙者の4.5倍ですけれど、禁煙すると4年で2.0、5年で1.6、10年で1.4倍と着実に落ち着いてきます。
お口が健康であることは体全体の健康にも大きく関わってきます。
歯周病を重症化させない為にも、定期的な歯科検診を行い、早期発見、早期治療を心がけましょう。
予防歯科