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Column

2025.01.13
顎関節症

顎関節症(がくかんせつしょう)とは、「口を開けると痛む(開口時痛)」「口が開かない(開口障害)」「あごで音がする(関節雑音)」といった症状がでるあごの疾患です。これらの症状は、あごの関節を構成する骨・筋肉(咬筋:こうきん・側頭筋など)・関節円板・靭帯などの異常によって生じます。タイプ別にⅠ型(筋肉の異常)、Ⅱ型(関節靭帯の異常)、Ⅲ型(関節円板の異常)、Ⅳ型(骨の異常)、Ⅴ型(どれにも当てはまらないもの)があり、タイプによって治療法が異なります。
顎関節症の治療のゴールは、「痛みなく」「十分に口が開く」ことです。「関節雑音」を手術で治療していた時代もありましたが、現在では症状が「関節雑音」だけの場合は治療の必要はないとされています。

Ⅰ型
主にあごの筋肉(咬筋・側頭筋など)の「使いすぎ」が原因のいわゆる「筋肉痛」です。咬筋は頬、側頭筋はこめかみに痛みを生じるので、こめかみの痛みから「頭痛」と訴える患者さんもいます。これは、筋マッサージやあごの安静で治療します。

Ⅱ型
関節靭帯の異常で、簡単にいうと「あごのねんざ」です。無理に口を開けすぎたり、固いものを食べたり、歯ぎしりや食いしばりでも生じます。顎関節は耳の穴の直前にあるため「耳の痛み」と思い、耳鼻咽喉科を受診される患者さんもいます。あくびは控える、固いものは避ける、食事は小さくカットしてあまり大きく口を開けないでいいようにするなど、可能な限りあごを安静にして治療します。

Ⅲ型
関節円板の異常です。関節円板とは、上あごの骨と下あごの骨の間に存在する、クッションのような役割をする組織です。Ⅲ型の患者さんは関節円板の位置がずれてしまっているため、口を開けると「カクカク」「ポキポキ」といった「関節雑音」を伴います。しかし、症状が「関節雑音」だけの場合は特に治療の必要はありません。一方で、関節円板のずれがひどくなると「関節雑音」が消失して「開口障害」が出現します。この場合、一般的にマウスピース治療を行ないますが、効果が不十分な場合には、歯学部付属病院の顎関節専門外来などで、より専門的な治療を行なうことがあります。

Ⅳ型
関節を構成する下顎骨の関節突起の変形によるものです。このタイプは症状だけでは診断困難です。そのため、顎関節症で来院された患者さんの診断は、まず、あごのレントゲンを撮影して骨の変形がないか調べるところからスタートします。変形した骨を元通りにすることは困難なので、「痛みなく」「十分に口が開く」ことを目標にマウスピース治療や開口訓練を行ないます。

顎関節症になる原因

顎関節症は1つの要因で発症するのではなく複数の要因が重なって引き起こされる病気と言われています。

ストレス
顎関節症の発症には心理的な要因も深く関係しています。
ストレスがたまると無意識に歯を食いしばったり緊張したりすることが多くなり、顎関節に過剰な負担をかけるからです。

姿勢の悪さ
猫背や前かがみの姿勢は顎や首、肩に余計な負担をかけて顎関節にまで影響を及ぼします。特に長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、現代の生活習慣が顎関節症を引き起こすリスクを高めています。

顎に負荷をかける悪習慣
片側で噛む癖や頬杖をつく癖、食いしばりや歯ぎしりの癖も顎関節に負担をかけます。
特に自分で意識が出来ない睡眠中に行われる歯ぎしりや食いしばりは、顎関節や歯に過剰な負荷をかけます。

噛み合わせの悪さ
上下の歯の嚙み合わせが悪いと、顎関節に均等に力がかからず負荷がかかることになります。
歯並びの悪さだけでなく、過去の歯科治療の際の噛み合わせの調整が不適切だった場合なども噛み合わせに影響します。

外傷
交通事故や転倒、スポーツ中の衝撃などで顎に直接的な外傷を受けた場合、顎関節症を発症する可能性があります。
顎関節が炎症を起こしたり、関節の変形につながるダメージが残ったり、慢性的な顎関節症の原因になります。

顎関節症の人がしてはいけない事

硬い食べ物を噛む
硬い食べ物やガムなどを噛むと顎に強い負荷がかかります。
顎関節症の症状がある場合は、なるべく柔らかい食べ物を選び顎に負担をかけない食生活を心がけましょう。

大きい口を開ける
痛みを感じている時に無理に大きな口を開けると顎関節にさらなる負担をかけ症状を悪化させる可能性があります。あくびや笑う時なども注意し、なるべく顎に負担をかけないようにしましょう。

片側だけで物を噛む
片側だけで物を噛む癖があると左右の顎にかかる力が均等ににならず、症状を悪化させます。
噛み合わせのバランスが崩れ、顎関節の悪化を招く事があります。

うつ伏せで寝る、頬杖をつく
顎の筋肉や関節を圧迫し、顎関節症の悪化を招きます。
数分であれば問題はないと考えられていますが、この状態が習慣化してしまうと痛みが出やすくなります。

パソコンやスマホを長時間使用する
長時間使用によって姿勢が悪くなり顎関節に悪影響を与えると考えられています。
パソコンやスマホを使用する際は30~60分に一回は目を休めるようにしましょう。

顎関節の治療法

噛み合わせの治療
被せ物や入れ歯、ブリッジなどの噛み合わせの状態を確認し異常がある場合には調整を行います。歯が抜けたままになっている部分がある場合には、ブリッジや入れ歯、インプラントで歯を補う必要があります。
噛み合わせの異常が広範囲に及ぶ場合には、矯正治療をして、根本的に噛み合わせを改善する場合もあるでしょう。

スプリント療法
スプリント療法とはマウスピースを使用した治療法です。就寝時にマウスピースを装着し、噛み合わせたときの負担を軽減することで顎関節と筋肉をリラックス状態にします。主に、歯ぎしりや食いしばりの癖がある方に使用することが多いです。
スプリント療法には保険が適用されます。歯型を取り、専用のマウスピースを作り、調整をしながら治療を続けていきます。

薬の服用
症状が重い場合には、痛み止めを処方します。その他、症状に応じて筋肉をほぐすようなお薬を処方する場合もあります。

まとめ

顎関節症とは、口を開けたときに痛みがあったり音が鳴ったりといった症状が現れる病気です。
ひどくなると口を大きく開けられなくなる事もあります。
重度の状態にまで悪化すると、日常生活に支障をきたすようになり生活の質を低下させます。

顎関節症は、噛み合わせの異常や歯ぎしり・食いしばりなどの癖が原因で引き起こされることが多いです。顎関節症になった場合には、噛み合わせの治療やスプリント療法などで改善を目指します。

顎関節に痛みや違和感がある場合は、早めに歯科医院を受診して相談しましょう。

口腔外科
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