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親知らず
「親知らずが腫れて痛い……でも抜くのが怖い」
「歯医者で親知らずの抜歯を勧められたけど、本当に必要なの?」
親知らずの抜歯は、多くの方にとって「できれば避けたい」治療ではないでしょうか。痛そう、腫れそう、仕事を休まないといけないかも――そんな不安から、つい先延ばしにしてしまう気持ちは、よくわかります。
しかし、放置した結果、隣の健康な歯まで失ってしまったというケースは、実は珍しくありません。そもそも親知らずは、なぜトラブルを起こしやすいのか?
最後に生えてくる歯、それが親知らず
親知らずは、正式には第三大臼歯と呼ばれ、歯列の最も奥に位置する大臼歯です。通常17〜25歳頃に生えてきますが、現代人の顎は食生活の変化により小型化しており、正常にまっすぐ生えてくる人はわずか約3割しかいません。
残りの約7割は、斜めに生えたり、横向きに埋まったまま出てこなかったり、一部だけ顔を出した状態で止まってしまいます。日本人は欧米人と比べて顎のサイズが平均3〜5mm短いとされており、親知らずのトラブルが特に多い民族なのです。
問題は「生え方」にある
親知らずが必ずしも悪者というわけではありません。正常に生えていて、上下でしっかり噛み合い、清掃もできる状態であれば、抜く必要はありません。
問題になるのは、以下のような「不完全な生え方」をしているケースです。

〇水平埋伏 横向きに完全に骨の中に埋まっている。 嚢胞(のうほう)の形成、隣の歯への圧迫
〇 斜め・半埋伏 斜めに生え、歯の一部だけが見えている。 智歯周囲炎の温床、虫歯・歯周病リスク大
〇 外向き 頬側に傾いて生えている 。頬の粘膜を繰り返し傷つける 。
〇 対合歯なし 噛み合う相手の歯がない 。歯ぐきを傷つけ口内炎の原因に 。
⚠️ 抜歯を検討すべき4つのケース
では、具体的にどのような場合に抜歯が必要になるのでしょうか。抜歯を勧める4つの基準をお伝えします。

ケース1:智歯周囲炎を繰り返す
**智歯周囲炎(ちしししゅういえん)**は、親知らずが原因で最も多く見られるトラブルです。
親知らずの周囲は歯ブラシが届きにくく、汚れが溜まりやすい構造になっています。そのため、周囲の歯ぐきに細菌感染による炎症が起こりやすくなります。一度落ち着いても、何度も繰り返すのが智歯周囲炎の厄介なところです。
重症化すると、顔が大きく腫れたり、口が開きにくくなったり、飲み込むときに喉の痛みが生じることもあります。まれに入院治療が必要になるケースすらあります。
炎症を繰り返すたびに周囲の組織にダメージが蓄積されるため、「毎回治まるから大丈夫」と油断するのは危険です。
ケース2:隣の歯に悪影響を与えている
親知らずが手前の歯(第二大臼歯)を圧迫すると、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。せっかく矯正治療できれいにした歯並びが、親知らずによって再び乱れてしまうケースも珍しくありません。
さらに深刻なのは、親知らずと隣の歯の間に食べかすが詰まり、隣の歯に虫歯や歯周病が発生するリスクです。この状態を放置すると、親知らずだけでなく、本来健康だった第二大臼歯まで抜歯せざるを得ないという最悪の事態に陥ることがあります。
私が診療していて最も心が痛む瞬間の一つが、「親知らずを早めに抜いていれば、隣の歯を守れたのに」というケースです。
ケース3:歯ぐきや頬の粘膜を傷つけている
親知らずが外向きに生えてくると、ほっぺたの内側の粘膜を繰り返し傷つけることがあります。また、噛み合う相手の歯がない場合、伸びてきた親知らずが反対側の歯ぐきを傷つけ、口内炎のような状態が慢性化することもあります。
ケース4:嚢胞(のうほう)が形成されている
骨の中に埋まっている親知らずの周囲に、含歯性嚢胞と呼ばれる袋状の病変ができることがあります。嚢胞は内部に液体を含み、無症状のまま徐々に大きくなっていくのが特徴です。
レントゲンやCTで偶然発見されることが多く、放置すると顎の骨を圧迫し、まれに顔の変形や骨折の原因になることもあります。
💡 抜かなくてもよい場合もある
ここまで読むと「やっぱり全部抜かないといけないの?」と不安になるかもしれません。しかし、安心してください。すべての親知らずを抜く必要はありません。
以下の条件を満たしている場合は、抜歯せずに経過観察で問題ないこともあります。
- 正常にまっすぐ生えている
- 上下の親知らずがしっかり噛み合っている
- 歯ブラシでの清掃がきちんとできる
- 周囲に炎症や嚢胞がない
- 隣の歯に悪影響を与えていない
大切なのは、自己判断ではなく、レントゲンやCTに基づく専門家の診断を受けることです。
🔬 抜歯の流れ:「何をするのか」を知れば怖くない
「怖い」と感じるのは、「何をされるかわからない」からです。ここでは、親知らず抜歯の実際の流れを、ステップごとに詳しくお伝えします。
ステップ1:消炎処置(炎症がある場合)
痛みや腫れなどの炎症がある場合、まず炎症を落ち着かせてから抜歯に進みます。抗生物質の投与や洗浄(消毒)を行い、炎症が十分に鎮まった状態で手術を計画します。炎症がある状態での抜歯は麻酔が効きにくくなるため、このステップは非常に重要です。
ステップ2:CT撮影
歯根の形状、神経との距離、骨との位置関係を3次元で正確に把握するためにCT撮影を行います。上顎の場合は、上顎洞(上顎の骨にある空洞)との近接状況を確認します。このステップがあるからこそ、安全で確実な抜歯計画が立てられるのです。
ステップ3:抜歯手術
局所麻酔(または静脈内鎮静法)のもと、以下の手順で抜歯を行います。
- 歯肉切開:歯ぐきを切開してめくる
- 骨の削除:歯冠(歯の頭部分)周囲の骨を削る
- 歯冠の切断・除去:歯を分割して取り出す
- 歯根の抜去:残った根を丁寧に抜く(曲がっている場合はさらに分割することも)
- 縫合・止血:通常5針程度を縫合し、10〜15分間の圧迫止血
手術時間は埋まり方によって異なりますが、30分〜1時間程度が目安です。
ステップ4:消毒・抜糸
抜歯翌日以降に消毒を行い、約1週間後に抜糸します。
✅ 術後ケア完全ガイド:腫れ・痛みを最小限にするために
「抜歯よりも術後が心配」という方は多いでしょう。ここでは、術後の経過と正しいケア方法をまとめます。
術後の経過の目安
当日 じわじわとした出血、軽い痛み。ガーゼで圧迫止血。処方された鎮痛剤を服用。
翌日〜2日後 腫れのピーク 冷やしすぎに注意(氷ではなく冷たいタオル程度)
3〜4日後 腫れが徐々に引き始める。処方薬を最後まで飲みきる。(特に抗生物質)
約1週間後 腫れがほぼ収まる・抜糸。通常の生活に復帰 。
10日〜2週間 皮下出血斑(青あざ)が消失。 自然に薄くなるので心配不要。
術後に気をつけるべき5つのポイント
1. 当日は強くうがいをしない
抜歯後の穴には「血餅(けっぺい)」と呼ばれる血のかたまりが形成されます。これは傷口を守るかさぶたのような役割を果たしており、強いうがいで流してしまうと治りが悪くなります。当日は口をゆすぐ程度にとどめましょう。
2. 処方された薬は指示通りに飲みきる
鎮痛剤は痛みがなくなっても、抗生物質は最後まで飲みきることが大切です。中途半端にやめると、感染が再燃するリスクがあります。
3. 喫煙・飲酒を控える
喫煙は傷口の血流を悪化させ、治癒を遅らせます。飲酒は血行を促進し、出血が止まりにくくなります。最低1週間は控えるのが理想です。
4. 激しい運動・長風呂を避ける
血行が良くなると出血しやすくなります。術後2〜3日は激しい運動やサウナ、長時間の入浴は避けてください。
5. 異変を感じたらすぐ連絡
痛みが日を追うごとに強くなる、大量に出血する、口が開かないなどの症状があれば、すぐに歯科医院に連絡してください。
🎯 まとめ
親知らずの抜歯が必要かどうかは、生え方、周囲の状態、隣の歯への影響を総合的に判断して決まります。正常に生えている場合は抜く必要はありませんが、以下に一つでも当てはまるなら、専門家への相談をおすすめします。
- 周囲の腫れや痛みを繰り返す
- 隣の歯に虫歯や歯周病が生じている
- 頬や歯ぐきを繰り返し傷つけている
- レントゲンで嚢胞が見つかった
まずはお気軽にご相談ください。

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